概要
● 研究データ管理が求められる背景
近年、世界各国で研究成果のオープン化を推進する動きが加速しており、特に公的研究資金による研究成果については、国や研究助成団体、研究機関等が、最終成果物である論文に加え、論文のエビデンスとなる研究データの保存や共有を求めるポリシーを制定する例が相次いでいます。
この主な背景としては、研究の透明性・再現性の向上、研究データの利活用による研究の加速化・効率化が求められていることが挙げられます。
こういった潮流を受け、論文投稿時に研究データの保存・開示を求める出版社も現れてきています。
データ共有と再利用促進のための新方針. (2016). Nature Digest, 13(12), 39–39.
(本文中より引用)"NatureとNature関連誌12誌では2016年9月から、掲載受理された論文の基礎データについて、著者以外の者による利用可能性と(可能な場合の)利用方法を明示した「データ利用可能性ステートメント」(data availability statement)を論文中に記載することを義務化しました"
● データマネジメントプランとは
データマネジメントプラン (DMP : Data Management Plan) とは、研究プロジェクト等における研究データの取り扱いを定めるものであり、具体的にはデータの種類、フォーマット、アクセス及び共有のための方針、研究成果の保管に関する計画などが記載されるものを指します。
DMPを作成するプロジェクトでは、研究の実施段階から終了後に至るまでの期間において、研究データがどのように生成、管理、共有、保存される予定か、を文書化し、この計画に従った管理を行うことが求められます。
なぜDMPは必要か
国や研究助成団体、研究機関等が定めるポリシーに準拠した形で研究データの保存・共有を行うには、研究の実施段階からプロジェクト終了後に至るまで、研究データを計画的かつ適切に保管・管理する必要があります。
そして、この研究データ管理に係る基盤整備や、研究者への支援に取り組むことが関係機関に求められています。
(参考)日本での導入状況
科学技術振興機構「オープンサイエンス促進に向けた研究成果の取扱いに関するJSTの基本方針」
【p.2より抜粋】
(データマネジメントプランの作成)研究プロジェクトの研究活動計画に責任を負う研究者(以下、「研究代表者等」と呼ぶ。)は、研究データの取扱いを定めたデータマネジメントプランを作成し、遅くとも研究を開始するまでにJSTに提出するものとする。
情報図書室へ相談できること
一般的に、事実を収集したデータには創作性が認められないため、著作権法上の保護対象外となります。
しかし、実際には著作物として認められるかどうか微妙な場合もあり、データ利用者が判断に悩むケースが存在します。
これに対応するため、一律に利用条件を明確にする目的で、メタデータにライセンスを記載する場合があります。
ライセンスに関する詳細は、情報図書室までお問い合わせください。
研究データの共有を促進するためには、データを良く知られたリポジトリに登録することが有効です。
また、論文の根拠となる研究データについては原則として10年間の保存が義務付けられており、その保存先として機関リポジトリは有力な選択肢です。
世界には数多くのデータリポジトリが既に存在し、分野別のデータリポジトリを検索できるサイトも立ち上がっています。
出版社が推奨するデータリポジトリの例のほか、国際的なデータリポジトリの横断検索サイト、及び極地研で利用できるリポジトリをご紹介します。
出版社による推奨データリポジトリ:
極地研で利用できるリポジトリ:
・アクティブなデータの取扱いについて
データは研究を進めるうえで欠くことのできない情報源であり、多くはデジタルデータとして管理されています。
デジタル環境においては、意図せずファイルを削除したり、保存した媒体が故障紛失したりするトラブルを考慮する必要があり、データの保存場所は容量や費用、簡便さに加え、バックアップやセキュリティ体制など、信頼性や安全性を踏まえて選択する必要があります。
また、将来的にデータをリポジトリに保存することを見据え、ファイルフォーマットやメタデータにも注意を払っておくと、結果的に省力化に繋がります。
研究の手法や進め方によって適切な管理方法・体制は様々ですので、適宜情報図書室までご相談ください。
・データの公開・非公開について
研究データの公開は、研究助成機関からの要求に対応するという側面のほか、データ引用や再利用が促進されるというメリットがあります。
ただし、研究戦略的な観点、あるいは個人情報やプライバシー情報を含む場合など、非公開が適切である場合もあります。
データの公開にあたり疑問がありましたら、情報図書室までご相談ください。
・データへのDOI付与について
DOI (Digital Object Identifier)は、コンテンツの電子データに付与される国際的な識別子です。
ブラウザ等に入力するとコンテンツの所在情報(URI)に変換される仕組みを持つため、学術コミュニティでは主に論文のリンク切れを防ぐために用いられてきました。
DOIを研究データにも付与することで、論文同様に引用が可能となり、利便性が増すことが期待されます。
極地研では、「北極域データアーカイブ (ADS : Arctic Data archive System)」及び「国立極地研究所学術情報リポジトリ」でDOIを付与することが可能です。
DOI付与についてご不明な点がありましたら、情報図書室までお問い合わせください。
参考:
・データに関する記述様式について
世界に数多く存在するデータリポジトリでは、論文のエビデンスとなる研究データに留まらず、生データ、あるいは研究の過程のデータを保存・共有していることもあります。
また、ほとんどの研究データにはメタデータが付与されていますが、その品質や粒度は多くのところデータ保持者に委ねられています。
利用者によるデータの活用を促進するためには、一定の記述様式を定めておくことが有効です。データリポジトリ側によるガイドライン作成のほか、データジャーナルへの投稿という手段もあります。
詳細は、情報図書室までお問い合わせください。
より深く知るために
研究データ管理トレーニングツール
オープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)により作成。主に大学や研究機関等の研究支援職の方(図書館員や情報技術職員、URAなど)に向けて作成され、
1) 各学習者が研究データ管理に関する基礎的な知識を得ること
2) 各学習者が自機関における研究データ管理サービス構築の足掛かりを得ること
を目的としている。